名古屋高等裁判所 昭和50年(け)3号 決定 1975年9月18日
主文
本件異議申立を棄却する。
理由
本件異議申立の趣意は、弁護人中村亀雄ほか五名共同作成名義の「即時抗告の申立」と題する書面に記載のとおりであるから、これを引用する。
そこで、本件申立の当否について案ずるに、一件記録とくに第八回公判調書及び忌避申立書によれば、原裁判所が、昭和五〇年九月三日開廷した被告人に対する強姦致傷被告事件の第八回公判期日において、弁護人が取調請求をした証人川口義一ほか三名の証人申請を却下し、これに対しなされた異議申立をも却下したところ、これを不服とし不公平な裁判をする虞れがあるものとして、申立人らにおいて原裁判所を構成する三裁判官に対する忌避申立に及んだものであると認められる。しかしながら、およそ訴訟手続内における審理の方法、態度等に対する不服を理由とする忌避申立は、それ自体としては裁判官を忌避する理由となしえないものと解されるものであるところ、前記忌避申立は、まさに原裁判所の審理手続に対する不服のみを理由とするものにほかならないのであるから、右申立は、訴訟手続を遅延させる目的のみでなされたことが明らかであるというべく、従つて原裁判所が該申立を刑訴法二四条一項に則り却下したことは、けだし当然の措置である。また該申立のうち記名代印によるものを不適法とした点も、刑訴規則六〇条、六一条の法意に徴し、正当としてこれを是認することができ、原決定に違法の廉は毫も存しない。
なお、本件申立のうち、弁護人中村亀雄、同石坂俊雄以外の四名については、いずれも記名代印によるものであるから不適法であり、法律上無効のものであるというのほかはない。
よつて、本件申立はその理由がないので、刑訴法四二八条三項、四二六条一項に則りこれを棄却することとして、主文のとおり決定する。